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【美大留学記#01】英語とコミュニケーションと大誤算

こんにちは。振り返ればそれなりに順調だった1年生と違って、2年生になった今年度はつまづきまくっているToshiです。

デザインアカデミーアイントホーフェンの2年生になってから半年ほど経つのですが、この半年間は課題に対して色々と苦戦していました。なので、逆にそんな生々しい日々の様子を留学生の目線でお伝えしていけたらということで、久しぶりにブログの記事を書いています。

さて、そんな今回は『英語とコミュニケーションと大誤算』というテーマでお話させていただきたいと思います。

言葉+ビジュアルというコミュニケーションツール

海外留学と聞いて最初に「英語でのコミュニケーション」ということを思い浮かべる方が多いと思いますが、やはり英語がネイティブレベルでない人にとっては、英語で自分の思っていることを正確に伝える、というのはなかなか難しいです。

しかしながら、美大のいいところは「自分の伝えたいことを伝えるのに100%言葉に頼らなくてもいい」ところです。コミュニケーションをとる上では、言葉の他に作品そのものであったり、作品のプロセス、アイディアを展開したスケッチブックといった視覚的に伝える手段を使うことができるので、極端な話、言葉の説明が下手でもビジュアルで考えを正しく伝えることができれば、何にも問題がないわけです。

よく「いいデザインに説明はいらない。」と言われるのも、そういう理由であったりするのかもしれません。

無意識にビジュアルに頼ってしまうように…

そんなわけで、今の学校に入学する前から「コミュニケーション=言葉+ビジュアル」として捉えていました。グループで行われた入試面接の時も、授業中に行われるフィードバックミーティングの時も、先生やクラスの子と話す時は常に「何か物理的に見せることができるもの」を使ってコミュニケーションをとっていました。

もちろん英語で説明もするのですが、困ったり英語で説明ができない時はスケッチやモデルを手に取って「こんな感じ!」ということも1年生の時はしばしばやっていました。

そして、こういうコミュニケーションをとっていて恐ろしいのは、「実際に英語力を基礎としたコミュニケーション能力が上がっている訳ではないのに、(実力以上に)上達していると錯覚してしまうこと」です。

本来は、抽象的なことや概念的なことでも英語できちんと伝えられるように努力をしなければいけなかったのに、知らず知らずのうちにそれをさぼってしまっていたのです。

その結果、色や形といった表面的なことは英語で伝えられるものの、少し複雑だったり抽象的なコンセプトやアイディアのことになると、自分で思っている50%も伝えられない、という実力に留まってしまいました。

しかし、本当に恐ろしいのは2年生になるまでそれに全く気がつかなかったということです。

言葉で説明できないから、先生のアドバイスを鵜呑みに

デザインアカデミーでは2年生になると学部に別れるのですが、学部の課題は1年生の時と比べて自由度が高くなる一方、抽象度が増します。1年生の課題は、決められた条件の中、比較的短いスパンで作品を制作していくので、作品制作の一つ一つのステップを明確にしやすく、手を動かしていれば作品が出来上がっていくという感じです。

例えば、1年生の課題が「白い厚紙を使って10cm x10cm x10cmのシンプルな箱を作ってね」というものだったとすれば、2年生の課題は「コスト€15以内で、なにかプロダクトを作ってね」といった感じです。

前者は素材(=白い厚紙)と最終形(10cm x10cm x10cmのシンプルな箱)がハッキリしているのに対して、後者は素材と最終形のどちらも指定されていないので、自分で決めなければいけない訳です。

その時に大切になってくるのが「なぜその素材を選んで」「どうしてそういう最終形になる必要があるのか」という根拠やストーリー、つまりコンセプトです。

作品の根幹であるこのコンセプトを詰めるために、先生や同じ学部の子とミーティングを重ねる訳ですが、もちろんこの「コンセプト」というのは、アイディアが現実に目に見える形になる前のものなので、補助的な要素として画像や動画を用いたとしても、基本的にはロジック立てて言葉で相手に伝わるように説明する必要があります。

しかしながら、2年生になったばかりの私には言葉でコンセプトを伝える力がなく、結果どうなってしまったかというと、先生が「こういうコンセプトとかいいんじゃない?」と(あくまで一人のデザイナーとして)提案してくれた案をほぼ100%鵜呑みにして、作品を作っていました。

実際に手を動かしてコンセプトを形にするのは好きなので作品制作は楽しく、最終的に出来上がった作品も満足できるものにはなりましたが、先生方からの最終講評はみんな同じようなものでした。

「頑張っていたけど、あなたなりの主張やアイディアが少し薄いかな。。。」

そこで初めて言葉を使って説明することから逃げずに、「自分はこう思って、こうやりたいんだ!」と自分の意見を主張することの大切さを痛感した訳です。

さいごに

今はこの経験から、クラスの友達に自分の課題のコンセプトを話すように心がけていたり、たとえ伝えるのが難しいと思っても「自分はこうやりたい」という主張を先生には伝えるようにしています。そうすることで、どんどん課題に深く入っていくことができ、興味も湧いてくるので不思議です。

なので、もし海外の方とコミュニケーションをとって何か一緒に動く機会がある時は、ぜひ恐れずに「自分はこう思うし、こうやりたい」ということを一回は伝えてみてください。きっと、そのプロジェクトがもっと好きになるはずです。

それでは、また。

Toshi

都内某私立大学経済学部卒業後、総合家電メーカーの経理部、ホテルのフロントデスク、医療機器ベンチャー企業を経て、2018年9月よりオランダへ渡航し、Design Academy Eindhovenに入学。 現在、同大学のThe Morning Studio学部(Man and Well-Being)に在籍中。

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