【美大留学記#09】文化によるコミュニケーション方法の違いって、語学力と同じくらい結構デカい
オランダ生活も3年目に突入し、英語は聴き取れるようになってきたのですが、「流暢にペラペラ喋れるか」と言われると、未だにそこは修行中であったりします。特に、同じ日に3回も“Sorry?”なんて聞き返された日には、語学力に対する自信がベコベコに凹んだまま家路についたりなんてこともざらにある訳で。。(笑)
でも、大事なことって実は語学力を活かすためのベースとなる「文化によるコミュニケーションの違いを理解すること」だったりします。
実際、今までを振り返ってみてそれに気づいた後は「コミュニケーション方法の違いによる、すれ違い」が意外に多いことに驚いたりしました。
なので、今回は語学力ではなく、その「コミュニケーションの違い」について経験から感じたことをお話出来たらと思います。
(前回はこちら:【美大留学記#08】アート・デザインのバックグラウンドなしで美大で闘うということ)
英語がペラペラでコミュ力が高そうな欧米人も、実は意外と言葉に詰まる時は詰まっている
学校でヨーロッパの子達に囲まれて生活していると、やはり英語がペラペラに喋れる彼ら彼女らと比べてしまって、ついつい自分の語学力が気になってしまいます。
そんな中で彼ら彼女ら同士の会話が弾んでいるのを見かけてしまうと、つい「やっぱり英語がペラペラだから・・・」なんて思ってしまうことも多いです。
でも本当に、いつもいつも会話が弾んでいるんでしょうか?
もちろん同じ人間ですからそんなことはありません!
つい先日も学校で欧米の子たち数人とランチをしながらお喋りしていたのですが、急に途中で話題が尽きてしまって会話が止まってしまったことがありました。
そこで感じたのは、
会話が止まる気まずさは日本も欧米も一緒!笑
ということ。
そういうところは日本人でも欧米人でも関係がないんですよね。
では、なぜに「欧米人=英語ペラペラでコミュ力が高い」というイメージがあるのでしょうか?
Erin Meyerさんという異文化マネジメントの専門家の方が書いた『The Culture Map: Breaking Through the Invisible Boundaries of Global Business(邦題:異文化理解力 ― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養)』という本を読んでみて、その答えが分かりました。
“察する”日本人と“口に出す”欧米人
Erin Meyerさんによると、国別のコミュニケーションの違いは《”ローコンテクスト”ー”ハイコンテクスト”》という軸で位置付けができるそうです。
- ローコンテクスト
- 良いコミュニケーション=正確でシンプル、明解なもの
- 言葉は文字通りに受け取られる
- きちんと伝えるために繰り返して言うことは、好意的なものとして受け取られる
- ハイコンテクスト
- 良いコミュニケーション=洗練されて深みがあり、ニュアンスを含むもの
- メッセージは直接的に明言されることもあるし、間接的に伝えられることもある
- 伝えたいことは、ほのめかされることが多く、ハッキリとは伝えられない
この軸によると、ヨーロッパのほとんどの国がローコンテクストに属し、アジアのほとんどの国がハイコンテクストに属することが分かります。
つまり、私が欧米の子達とコミュニケーションをとる時にはここでつまづいていた訳です。
私:「〇〇ってことだよ。」(でも本当は△△ってこと!文脈から考えたら分かるよね!)
相手:「なるほど〇〇ね。」(〇〇ってことね!△△だったらそう言うもんね!)
みたいな感じでしょうか。
そりゃあ話がすれ違って当然です。。
欧米人が“アクティブ”で“コミュ力が高く”みえる訳
欧米の子達がローコンテクスト文化であるがゆえに、きちんと言葉にして相手に伝えることに慣れているのは先ほど述べた通りですが、一緒に話していくうちに、彼ら彼女らが“アクティブ”で“コミュ力が高く”みえる他の理由が分かってきました。
人、物に限らず、とにかくよく「好き」と伝える!
欧米の子達と話していて気づくのは、彼ら彼女らが“Love”と“Like”を本当によく使うということ。
服がお洒落だった時は“I like your shirt, it’s really cool!”と言いますし、作品が良かった時は“I love your work!”と言ったり、また言い方が素敵だった時には“I love your words!”なんて言ったりします。
とにかく、息をするように「好き」って伝えてます。笑
最初はびっくりしますが、慣れると気持ちがいいもので、今ではおかげさまでコミュニケーションが円滑になってます。
聞かれる前に、自分のことを積極的に語る!
日本だと「相手から尋ねられてはじめて自分のことを語りだす」みたいなケースが多い気がしますが、欧米の子達は積極的に自分のことを話す傾向があるように感じます。
それは、例えば「昨日、突然の雨でびしょ濡れになっちゃって大変だった〜」みたいな日常の出来事から「実は彼氏と別れちゃって〜」みたいなプライベートのことまでです。
なんとなく日本だと相手との関係性(親しい友達なのか、知り合ってまだ日の浅い友人なのかetc)によって話す話題を無意識に選んでしまうことが多いですが、こっちではそういうことはあまり関係がないようです。
これが結構いいんです!
日常的に自分の情報を開示しているので相手も自分のことを理解してくれるし、同時に相手のことをよく知る機会が多いということなので!
ちなみに、私も日本にいた頃よりは自分語りをよくするようになった気がします。笑
“わかる〜!”ではなく、“でも、私は〜”
海外で生活している経験から、個人的に納得できたもう一つが《”対立を好む”ー”対立を避ける”》という軸。
- 対立を好む(Confrontational)
- 意見の対立や議論はチームや組織にとって良いものとされる
- 開放的な対立が望ましい
- 対立は人間関係に悪影響を及ぼさない
- 対立を避ける(Avoids confrontational)
- 意見の対立や議論はチームや組織にとって良くないものとされる
- 開放的な対立は望ましくない
- 対立はチームの輪を乱したり、人間関係に悪影響を及ぼしてしまう
写真の図を見ても分かるように、一般的に欧米の国々が対立を好むのに対し、アジアの国々は対立を避ける傾向があって、これは結構実感としてあります。
私:「これは〇〇って思うんだよね〜。」
私:(「うん、そうだね!」って共感してくれるかな?と無意識に期待。)
相手:「うーん、でもそれって□□だから、△△の方がいいと思うよ。」
私:(私の意見ダメだった・・??)
みたいなことがよくありました。笑
基本、日本だと「意見の対立、衝突=人間関係の悪化」みたいに捉えられることが未だに多いので、なかなか対立する(してしまうかもしれない)自分の意見を言うのって難しかったりします。
その点、人間関係と意見の対立をキッパリ切り離している欧米式のコミュニケーションは自分の意見を言いやすいので、議論も深めやすいし、議論のスピードもはやいです。
そして個人的に良いなと思うことは、議論をする時は、必要以上に感情的にならず論理的に議論がなされる、と言うこと。
欧米の子達は意見の対立や衝突からアイディアを昇華させることに慣れているので、対立する意見を述べる時は必ず「意見+根拠・理由」と言うセットで語ります。
ハッキリとした理由や根拠があっての意見なので論理的に議論を進めやすいですし、なにより「これはこういうもんなの!」「昔からそうき決まってるの!」みたいなよく分からない論理で意見が押し通ることがないので、完璧とはいかないまでも、皆がある程度納得できる結論に辿り着きやすい気がします。
おわりに
今回は語学力を生かすためのベースとなる、文化によるコミュニケーションの違いについてお話させていただきました。
まとめると、日本人が海外の人とコミュニケーションする時に気にした方が良いことは
- 自分の語学力は気にしない!
- 言いたいことは、ニュアンスで言わない!
- 「好き」って連発する!
- 小さいことでも、自分のことを積極的に語る!
- 意見の対立はポジティブなこと!
みたいなところかと個人的に思います。
海外の方とコミュニケーションをとる時に、この記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。
(『異文化理解力 ― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』には上記の他にもいろんな角度から異文化コミュニケーションについての分析が書かれているので、外資系企業に勤務される方とか、仕事で海外の方と関わる機会が多い方は、読んでおいて損はない本かと思います!)
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