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【美大留学記#02】評価を気にせずに、納得するまでやり切って見えてきたもの

こんにちは。前回に引き続き、今回も失敗から学んだシリーズです。

(前回はこちら:【美大留学記#01】英語とコミュニケーションと大誤算

もちろん順風満帆にいっている時も成長はするのですが、やはり壁にぶち当たったり、上手くいかない時期を経験した後の方が気付きも多く、成長するものですよね。

この半年間に私自身もそんな経験をして、そのおかげでデザインや作品に対する姿勢が変わったので、今回は『評価を気にせずに、納得するまでやり切って見えてきたもの』というテーマでお話させていただきます。

最終プレゼンテーションが、自分にとっての本当のスタート地点

この半年間、私は選択授業でシンセサイザーを作成するクラスを受講していたのですが、マイコンや電子回路といった電子工作にあまり知識と経験がなかったこともあり、作品づくりにはかなり苦戦させられました。

授業のテーマは「シンセサイザーを使った、インターフェイスのデザイン」ということで、本来はユーザーが使いやすいような「形」や「色」、「触り心地」といったものを考えてデザインしなければいけなかったのですが、私はそこまで手がまわらず、電子回路を完成させるので精一杯でした。

ゆえに、最終プレゼンテーションでの担当の先生からのコメントは予想通りのものでした。

「うーん、なんでこの四角い箱みたいな形になったのかがあまり説明されてなかったね。」

最終プレゼンテーションでの形。確かに四角すぎる。。。

なんとか最終のプレゼンに間に合わせるために、完成した電子回路を自作したスピーカーボックスにぶち込んだ感じは誤魔化せなかったようです。

しかしながら、このプレゼンの1ヶ月後にロッテルダムで行われる企画展に、この授業で制作したシンセサイザーを出展することになっていたので、まだリベンジするチャンスはあったのです。

もちろん最終プレゼンテーションが終わっているので、授業としての評価は決まっています。

しかし、このまま終わってはこれまで費やしてきた時間がもったいない!

そういう訳で、評価が決まった後にもう一度エンジンをかけ直す、というなんとも遅すぎるスタートを切ったのでした。

自分の興味を掘り下げてみると、面白いことが見つかる

最終プレゼンテーションが終わりまず最初にやったことは、この四角いシンセサイザーを分解することでした。

外観のデザインをあまり考えなかったとはいえ、完成させるためにはそれなりに時間も費やしていた訳ですが、その費やしたコストを惜しんで作品を表面上だけ修正するのは「間違った道を戻らす突き進む」ようなもの。

という訳で、ここまで進んできてしまった間違った道を戻ることに決めました。

バラバラに。でも何かスッキリした気もしました。

シンセサイザーを分解しながら冷静に自分の作品を眺めてみた時に、考えたのは「なぜこの作品が、自分として面白いと感じることができなかったのか?」ということでした。というのも、プロセスの段階では予想外の発見であったり、ハプニングであったりと電子回路作成に苦戦しながらも、それなりに楽しめて面白かったからです。

では、なぜそんな「面白さ」が最終形としての作品に含まれていなかったのか?

それは、その「面白さ」を構成している要素に自分があまり注意を払わず、それを意識的にデザインに組み込もうとしていなかったからです。

自分が面白いと感じている状態とは、自分自身が「ワクワクしている」状態であり、言い換えれば「自分の興味や関心があること」と「目の前で起きていること」が結びついている状態です。

だからこそ、自分の興味を深掘りして要素を抽出し、デザインの中に意識的に組み込むことが面白い作品を生み出す近道の一つなのです。(もちろん、自分の興味を上手く抽出できても、それを目に見える形にする能力に作品の面白さは左右されますが。)

という訳で、私が生まれ変わらせたシンセサイザーは《SF x ファンタジーx 触り心地》というテーマで作品を完成させました。ストーリーは「今からそう遠くない未来、何かの偶然で機械の体をもった“音を食べる虫”が生まれた。」というものです。

電子回路の機能としては「音を録音して、録音した音をノイズを入れたり歪めた上で再生する」というシンプルなものなのですが、音を録音する=音を食べる、ノイズが入ったり音が歪む=音を消化する、というように自分の興味に従って機能に意味づけをすることで、作品を面白くするストーリーが生まれました。

このストーリーはクラスメイトにも担当の先生にも好評だったのですが、それは考えてみればこのストーリーが「私個人の主観に偏ったもの」だったことが大きな要因だったように感じます。

Googleで検索すれば素晴らしいアイディアが山ほど見つかり、誰もがそれにアクセスできる時代だからこそ、万人受けするようなアイディアより、主観的な偏ったアイディアからの方が面白いものが生まれてくるのかもしれません。

さいごに

最終的に提出するフォーマットや形が決まっていると、ついつい誰からも認められるようなものを目指してしまいがちですが、時には自分の興味に従って走り切った方が面白いものを生み出せたりします。

なので、プロジェクトやお仕事で行き詰まったりしてしまった時は、別のアプローチの一つとして「自分の主観的な興味から始めて走り切ってみる」ということを試してみるのもいいのかもしれません。

それでは、また。

Toshi

都内某私立大学経済学部卒業後、総合家電メーカーの経理部、ホテルのフロントデスク、医療機器ベンチャー企業を経て、2018年9月よりオランダへ渡航し、Design Academy Eindhovenに入学。 現在、同大学のThe Morning Studio学部(Man and Well-Being)に在籍中。

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