こんにちは。前回までは授業における課題との向き合い方がメインだったので、今回は学校の友達と話している中でふと感じたことについてお話させていただきます。
(前回はこちら:
【美大留学記#03】先生のアドバイスと自分のやりたいことをぶつけて、アウトプットの質を高める)
「海外でも日本のアニメは高い評価を得ていて、幅広い層からの人気がある」なんて話は日本にいてもよく聞かれると思いますが、確かに一般的に日本のアニメの認知度は高いように感じます。(結構コアな日本のアニメのファンだと教えてくれた友達も少なくありません。)
そして、アニメだけでなく日本のデザインや文化に興味をもっている人も多く、日本の有名なデザインスタジオはこちらでも有名だったりします。
という訳で今回は『日本のデザイン・文化の背景にあるストーリーに注目する』というテーマでお伝えさせていただきます。
海外でもダントツに有名な日本のデザインスタジオといえば、佐藤オオキさんが代表をつとめるデザインスタジオnendo。学校の友達が知っているのはもちろん、学校の先生も「デザインの参考に」ということで生徒に紹介していたりします。
出典:nendo.jp
私もnendoのデザインは大好きなのですが、日本人の私としての「好きなポイント」と海外の人が思う「好きなポイント」がどう違うのか気になり話を聞いてみると、どうやら要素を削ぎ落としたミニマリズム的なデザインに加え、気品を感じられる(美意識が感じられる)からのようです。
nendoの他には、工業デザイナーの柳宗理さんや建築家の安藤忠雄さん、同じく建築家の隈研吾さんもヨーロッパ人のクラスメイトや先生には人気なので、やはりその部分はヨーロッパのデザインと大きく違うところなのかもしれません。
ヨーロッパ人のクラスメイトや先生と日本のデザインについて話をしている時に、よく耳にするのは「美しい」という言葉です。「機能的だね」とか「賢くデザインされている」という言葉よりも先に「美しい」という言葉が出てくるんです。
ここで「ヨーロッパのデザインよりも日本のデザインの方が美的に優れている」ということを言いたいのではなく、日本のデザインが「美的観点を切り口にして語られることが多い」ということです。
さらに面白いことに、この「美的観点を切り口にした語られ方」は日本のデザインに対してだけでなく、京都の古寺や庭園、日本食といった日本文化に対してもされるということです。
つまり、日本の文化的遺産の美的価値の根底にある「侘び寂び」や「間(ま)」、「粋(いき)」といった日本独特の概念を深く理解することが、世界でも通用する魅力的なデザインを生み出す可能性を秘めているのです。
(ちなみに、世界的に有名なプロダクトデザイナーの深澤直人さんも、俳句の心を説明した『俳句への道』(高浜虚子 著)を読んで大きな影響を受けた、と語っています。)
そして、こういった概念って意外と海外の人に馴染みがなかったりするんです。
クラスメイトに聞いてみても「侘び寂び=ミニマムでカッコいい」という認識だったりします。
これってどういうことかというと、金継ぎしかり、京都の古寺しかり、伝統工芸品しかり、表面的には日本の文化的に価値のあるものの知名度は上がったけれども、その背景にある概念や歴史といったストーリーはあまり知られていない、ということです。
ここに面白くて魅力的なものを生み出せるチャンスが眠っているはずですし、日本人としてそういう情報にアクセスしやすい状況にいる訳なので、それを使わない手はない、ということですね。
という訳で、最近は日本固有の概念を本で勉強してみたり、伝統工芸品の歴史や出来上がるまでのストーリーを調べたり、江戸時代の社会を調べてみたりしてます。
もちろん、そういった背景にある概念や歴史といったストーリーを理解するだけでは、いい作品を生み出すためにはもちろん不十分で、それらを自分の中に落とし込んで消化し、作品として魅力的な形に翻訳する力は必要不可欠です。
なので、インプットをしつつ、同時に手を動かしながらその力もつけていくことにこれからもエネルギーを注いでいこうと思います。
今回は日本のデザインや文化の海外での受け取られ方についてお話させていただきました。
文化的価値のあるもののバックグランドは奥深いですし、それをそのままクラスメイトに話すと新鮮なようで「面白い」と喜んでくれます。
ストーリーや概念それ自体でもかなりの魅力があるので、それを何らかの形で上手く翻訳することができれば、何か別の魅力的なものを生み出すことができるかもしれません。
それでは。
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