世界は砂で作り出せる、哲学入門
今年の9月からDesign Academy Eindhovenというアイントホーフェンにあるデザイン専門の大学にて勉強しているのですが、毎回の授業が個性的で面白いので、定期的に紹介させていただこうと思います。
Philosophy in Practiceというこの授業は、その名前の通り哲学を身体を使って実践するという授業です。すんなりとは理解出来ない概念を理解し、さらにそれを身体を使って表現するということで、私だけでなく英語を流暢に話せる留学生のクラスメイト達も四苦八苦しながら毎回課題に取り組んでいます。(ちなみに、Design Academyの授業はすべて英語です。)
今回は、ハンナ・アーレント『人間の条件』プロローグ(Hannah Arendt Prologue Human Condition)を出発点として授業が進んだのですが、なかなか難解で味わい深いものでした。
人間とは、"地球に縛られた"知覚者(perceiver)であり創造者(maker)なのであろうか。 「労働」「仕事」「活動」は、彼女の"価値観”(world view)を構築している。 彼女は、無限の宇宙という"空間"(space)に対する、地球という有限の"場所"(place)に疑問を投げかけている。
世界とは、地球と人間の間の経験と論理が絡み合ったものである。
知覚者であると同時に観察者であるという、人間の曖昧さ。 私達は世界を見ているが、私達自身もその世界の中にいる。 つまり、私達は世界を知覚し、世界を創造している。 ともに存在する場所。
課題は「砂を使って、知覚者であると同時に創造者でもあることを経験する」というもので、具体的には自分と周囲の世界の空間を意識してそれを視覚化するというものでした。
位置や立場は価値観を導き、価値観は周囲の世界へとつながる。
普段意識していない、目にも見えない自分を取り囲む空間を視覚化するというのはとても不思議な体験で、砂という目に見える形になることで自分が世界と無意識にどのように関わっているのかを一部分でも客観的に見ることができ、またその人々の無意識の関わりがどのように世界を創っているのかを実感できたような気がします。
哲学の概念は一回の授業や体験で理解できるものではなく、何回も様々な観点から経験することで初めて腑に落ちるものだそうなので、この続きの哲学の授業も別の記事にて紹介していきながら、自分の理解がどのように変わって深まっていくのかもお伝えできたらと思います。