上手く描く必要はない!表現方法の1つとしてのドローイング
Body & Mindの学期では、ドローイングの授業があります。留学準備のための専門学校で目の前の対象物を写実的に描くドローイングの経験はありましたが、同じ名前でもデザインアカデミーアイントホーフェンのドローイングは全く違っていたので、今回はそのドローイングの授業をお話させていただきます。
授業を通して学べること
シラバスのこの授業の項目に「考えやアイディアを、想像的で適切な方法で表現する方法を学ぶ」との記述がある通り、このドローイングの授業を通して考えやアイディアといった自分の内にある、目に見えず言葉にするのが難しいものを表現するツールとしてのドローイングを身につけることができたような気がします。それは、自分の頭の中にあるものをドローイングとして視覚化するという一方通行ではなく、紙の上に表現されたものから自分の無意識の部分を読み解き理解するという双方向の営みのように個人的には感じます。
具体的な授業内容
課題として毎週5枚のドローイング(A3サイズ以上)を描いてくるように言われます。テーマは自分の頭の中に思い描いていること。主に、その5枚のドローイングを元に授業が進められていきます。
描いてきた5枚のドローイングを全員が床や机に並べ、一人ずつ順番に先生が中心となってクラス全員で講評をしていきます。批判することはなく、先生も含め各々が思ったことを自由に発言していく形式です。そして、慣れてくると5〜6人ずつのグループに分かれてそれぞれ自分たちで講評するようになります。このお互いに講評をするという形式を通して、個人的には下記のようなメリットを実感しました。
- 自分の持ち味に気づき、伸ばすモチベーションになる
- 講評を通して、作品を異なる視点から分析的に捉えられるようになる
間違いはない!アウトサイダー・アートから学ぶ、はみ出すことを恐れない大切さ
毎回の授業の冒頭では、インスピレーションのために先生が本を持ってきてアーティストの作品を紹介してくれます。そして、その多くが印象派絵画や古典絵画といった多くの人がアートと聞いて思い浮かべるような作品ではなく、アウトサイダー・アートやグラフィティといった美術の教科書ではあまり見かけないような作品ばかりです。先生は気になった作品を一つ一つ紹介しながら、一貫して「表現することを恐れない大切さ」を語ります。それは❝「上手」「下手」「恥ずかしい」といった他人からどう評価されるか・見られるかの基準に囚われるあまり、自分の内に存在する本当に表現したいもの(すべきもの)に集中できない状態❞から抜け出す大切さということを伝えようとしてくれているように感じました。
デザイナーはデザインを通して新たな視点や価値観を提供する者であり、他人の評価基準を理解しながらも、あえてそこから外れる勇気が必要なはず。そういう意味で、このドローイングの授業はデザイナーの基礎を築く重要な授業の1つではないかと個人的には思いました。