【美大留学記#13】地元をよく知る!いざ農園へGO!
今回も前回に引き続き、Dutch Design Weekに向けたプロジェクトのアイディア展開と、そのための農園への訪問のお話しです。
(前回はこちら:【美大留学記#12】コンセプトの前に、まずは好きな物で型を作ろう。)
Dutch Design Weekに向けた課題は「2人1組でペアになって、数週間後に来たるDutch Design Week(オランダで一番大きいデザインのイベント)で展示するためのディナーセットをデザインせよ」というもので、私は韓国人のクラスメイトの子とペアになって作品制作に取り組むことになりました。
そして、これはデザインアカデミーの教育の特徴でもあるのですが、課題については期限以外ほとんど制限がなく、自由に作品作りができるんです。
でも、これは裏を返せば、「能動的に自分たちで責任をもって、作品提出の期限までのタイムマネジメントをきっちりしなければいけない」ということ。
しかも、今回は展示まで4週間ほどしかない。。
先生たちは笑顔で「あんまりストレス抱えずに、気楽に楽しんでね」なんて言うのですが、もちろんそんなこと無理です。笑
時間的なプレッシャーと二人三脚で頑張るしかありません。。泣
アイデンティティと“繋がり”?
自分たちの作品のコンセプトを考える上で、Dutch Design Week全体のコンセプトは外せません。
というわけで、今年のDutch Design Weekのコンセプトを調べてみました。
2020年のコンセプトはThe New Intimacy(直訳すると“新しい親密さ”)、つまりCOVID-19の影響で人と触れ合う機会が減ってしまって、人々の関係性が希薄になってしまいつつある時代に、どう新しい「人との繋がり」を定義するか、ということがテーマのようです。
なので、ペアの子と考えたのは、自分たちのプロジェクトも「希薄な関係性」と「新しい繋がり」をキーワードに、それを自分たちの文脈で解釈しよう、ということ。
言い換えると
- 「希薄な関係性」= 異国人ゆえ、実際に住んでいるにも関わらず、オランダという国に対して強い繋がりを感じられない私たち
- 「新しい繋がり」= どうやったら、精神的に、自分たちの住んでいる“場所”との繋がりをつくることができるのか
ということです。
じゃあ、まずはオランダを、特に食文化を知らないと
オランダと自分たちとの新しい”繋がり”を探る上で、衣食住の「食」はとても大事です。
というわけで、オランダの食事について少し調べてみると、オランダでは気候や土地の影響でジャガイモやにんじん、ケールといった作物を使った料理が伝統的で、StamppotやHutspotに代表されるような、野菜を蒸して潰した料理が多いそう。
確かにStamppot(マッシュポテトみたいな料理)は聞いたことがあったのですが、実はそういった料理って食べたことがなかったので、スーパーで買って食べてみることにしました。
実際食べてみると、思ったより素朴な味で、シンプルながら素材の味をしっかりと感じることができる料理であることが分かりました。
しかも、歴史的には、食材に恵まれているとは言えない環境で、その土地で採れた作物を生かして作られた料理だとか。
「素材の味を生かす」+「その地元の食材で調理をする」、、、これって、日本料理や韓国料理に通じるところがあるのでは?!
この気づきが今回のプロジェクトのスターティングポイントになりました。
地元の食材を生かしながら、その食材を日本人・韓国人として解釈して料理を作り、そのための食器をデザインする。
このコンセプトのもと、まずは地元の食材を理解することから始めようということで、近くにある農園へお邪魔することにしました。
Genneper Hoeve農園
訪れたのは、デザインアカデミーから自転車で10分ほどの距離にあるGenneper Hoeve農園。
Genneper Hoeve農園は栄養学の研究をされていたMirjam Matzeさんと生物学者のAge Opdamさんが2人で立ち上げた農園で、とくに鶏や豚といった家畜の育て方と有機的な栽培に非常に拘っているそうです。
それゆえ、私たちが訪れた際も、地元の人々で賑わっていました。
スーパーの食材と比べたらどうだろう?
Genneper Hoeve農園の農作物の質が高いことに疑いはなかったのですが、果たして市販の野菜とどれだけ違うのかを確かめたくなり、比べてみることにしました。
近くのスーパーで同じ野菜を買ってきて、同じように茹でて食べ比べてみたのですが、想像以上に違っていてびっくりでした。
Genneper Hoeve農園のものの方が香りが強く、また食感もしっとりとしていて、市販のスーパーのものが水っぽく感じるほど凝縮した、濃い味!
正直、かなり美味しかったです。
そして、この素材の旨みは「茹でる」か「蒸す」ことで引き出されることも分かりました。
かなり大きな収穫です。
では、何を作ろう?
料理を決める上で、考慮しなければいけない条件は以下の3つ。
- 素材の味を引き出す上で、調理方法は「茹でる」か「蒸す」ことを中心に考える
- 日本料理と韓国料理で、似ている料理からヒントを得る
- 料理を通して「あたたかい繋がり」を作る目的ゆえ、料理も温かいものが良い
そして、その条件を満たすものとして以下の料理と、そのための食器を制作することに決めました。
「茶碗蒸し」のような「ケランチム(계란찜)」のような料理
茶碗蒸し ケランチム
「お味噌汁」のような「チゲ(찌개)」のような料理
お味噌汁 チゲ
「お好み焼き」のような「チヂミ(전)」のような料理
お好み焼き チヂミ
おわりに
Genneper Hoeve農園にて実際の食材を手に入れ、味わうことでどんな料理のための食器をデザインするかは決まりました。しかしながら、「新しい繋がり」を食器として体現するにはまだまだコンセプトが弱いままです。それゆえ、この後は食器を作りながらコンセプトを詰めていくことになるのですが、それはまた、次回の記事でお話しさせていただけたらと思います。
それでは。