オランダの住民登録に必要な、戸籍謄本(戸籍抄本)のアポスティーユ、リーガリゼーション、ノータリゼーションって何?
今回は住民登録で必要な戸籍謄本(戸籍抄本)をオランダでも通用する公的な書類にする方法と、その翻訳の方法について紹介します。移住にあたって戸籍謄本(戸籍抄本)に対して何やら手続きが必要そうなのは分かっても、アポスティーユだの、リーガリゼーションだの、ノータリゼーションだの聞き慣れない単語ばかりで、結局何をどうすればいいのか分からなかったりしますよね。今回の記事では、そのややこしそうに見える手続きを図を交えながら説明していきますので、一つ一つ順番に理解してもらえれば、案外シンプルな手続きということが分かってもらえると思います。
市役所での住民登録に必要な書類
銀行口座開設をはじめ様々な手続きに必要なBSN(オランダの社会保障番号)を手に入れるためにも、住むところが決まったらすぐに市役所で住民登録をする必要がある訳ですが、では住民登録にあたってどんな書類が必要かというと、下記の3点を準備する必要があります。
- パスポート
- 賃貸契約書
- 戸籍謄本(戸籍抄本)
上記3点の書類のうち、気をつけなければならないのが「戸籍謄本(戸籍抄本)」です。これに関しては、日本の市役所等で発行された原本をそのまま提出するだけではダメで、オランダ語または英語の翻訳を添付した上で、オランダ国内で公的な書類と認められるように事前に手続きをしておかなければいけません。そのために必要になってくる手続きがアポスティーユやリーガリゼーション、ノータリゼーションといったものになります。この手続きも含めて、戸籍謄本(戸籍抄本)の準備は文字だけの説明だと少し分かりにくいので、図にまとめてみました。
ノータリゼーションとは
ノータリゼーション(Nortarization、公証)は日常生活では使わない言葉なので、初めて耳にする人も多いのではないでしょうか。その意味は、日本で作成した私文書(公的機関が発行したものではない文書)の真偽に関して、文書になされた署名を公的機関である公証人等が「本人のものに間違いない」と証明することです。「公的な書類でないものを公的な書類に変える手続き」と理解してもらえれば問題ないです。戸籍謄本(戸籍抄本)の翻訳に関して言えば、自分で翻訳した文書は公的な書類でないので、ノータリゼーションによって戸籍謄本(戸籍抄本)の原本と同じように公的な書類となるわけです。
ノータリゼーションは自分で作った文書を、公的な文書に変換する手続き!
アポスティーユとリーガリゼーションの役割
さて、アポスティーユ(Apostille)とリーガリゼーション(Ligalization)とは何なのでしょうか。どちらも日本で発行された公的な書類を海外でも正式な書類として使えるようにする手続きです。なので、日本で発行された戸籍謄本(戸籍抄本)とその翻訳文は、アポスティーユまたはリーガリゼーションを行って、オランダでも認められる正式な書類にする必要があるわけです。ここで注意して欲しいのが、どちらの手続きも日本で発行された“公的な”書類に対してしか行えないということです。つまり、自分で戸籍謄本(戸籍抄本)を訳した翻訳文書は、ノータリゼーションを行って公的な書類にしておかない限り、この手続きがとれないということです。
アポスティーユ/リーガリゼーションは、オランダでも通用する正式な書類にするための手続き!
自分で作った翻訳文書は、そのままではアポスティーユ/リーガリゼーションできない!
アポスティーユとリーガリゼーションの違い
アポスティーユもリーガリゼーションも役割的には同じなのですが、正確には内容が違います。外務省のホームページには、『公印確認、アポスティーユは、どちらも日本の官公署、自治体等が発行する公文書に対する外務省の証明のこと』との説明があり、この「公印確認」については『日本にある外国の大使館・(総)領事館の領事による認証(=領事認証)を取得するために事前に必要となる外務省の証明のことです。外務省では公文書上に押印されている公印についてその公文書上に証明を行っています。外務省で公印確認を受けた後は必ず日本にある外国の大使館・(総)領事館の領事認証を取得して下さい。』との説明がなされています。ここでは、「外務省による公印確認」と「日本にある外国の大使館・(総)領事館の領事認証」を合わせたものが、リーガリゼーションという理解で大丈夫です。またアポスティーユとは、書類を提出する先の国がハーグ条約(外国公文書の認証を不要とする条約)の締結国である場合、付箋による証明を付与することで日本にある外国の大使館・(総)領事館の領事認証が不要になる(認証があるものと同等として扱う)ことを指します。つまり、アポスティーユを取得してしまえば、大使館・(総)領事館に行かなくて済むということです。ちなみに、このアポスティーユは外務省または公証人役場で取得することができます。
【リーガリゼーション】
外務省で公印確認 + 在日オランダ大使館での認証 <<2ステップ>>
【アポスティーユ】
外務省or公証人役場にてアポスティーユ取得 <<1ステップ>> ←←←←←←←←オススメ!!!
自分で戸籍謄本(戸籍抄本)を翻訳するのは大変
まず自分で翻訳する場合ですが、自分で翻訳+ノータリゼーション+アポスティーユという3つのステップを踏まなければいけないので大変ですし、時間がかかる上に手間もかかるので、「どうしても自分で訳した文書が良いんだ!」という人以外は避けたほうがいい翻訳方法です。
在オランダ日本大使館での翻訳は、厳密には“翻訳文書”ではない?!
次にオランダにある日本大使館にて翻訳をしてもらい、オランダの外務省にてリーガリゼーションをする方法ですが、これは自分で翻訳するのに比べれば手間はかからないのですが、最低でも2回はデン・ハーグにある日本大使館を訪れなければいけないので、やはり時間もお金もかかってしまいます。それに加え、市役所の担当者によっては、この日本大使館で発行された文書を受理してくれない場合もあります。これはなぜかというと、日本大使館では翻訳業務を行っていないため、その代わりになる「戸籍記載事項証明」という戸籍謄本(戸籍抄本)から内容を抽出した身分事項に関わる証明書しか発行できないためです。内容は同じでも、厳密には“翻訳文書”ではない「戸籍記載事項証明」を翻訳文として認めることはできない、というのが受理しない担当者の理由のようです。もちろん「戸籍記載事項証明」で住民登録が出来た人も多いので問題ないのかもしれませんが、安全策を取るならば、法定翻訳家に翻訳を依頼するのがベストです。
ベストは法定翻訳家に翻訳を依頼すること!
戸籍謄本(戸籍抄本)を翻訳する3つの中で、個人にはこの方法が一番おすすめです。オランダの法廷に登録されている翻訳家に翻訳してもらった文書は、もちろんオランダの公文書なのでアポスティーユは不要でそのまま市役所に提出できる上、手続きも依頼するだけなのでとても簡単です。私が依頼した時は、値段は€50(約6,200円)ほどで、メールで戸籍抄本をスキャンしたものを送ってから2日ほどで翻訳された文書が郵便で送られてきました。日本語からオランダ語の法定翻訳家は、Raad voor Rechtsbijstand, Bureau WBTVのウェブサイトによると11人おり、なかには日本在住の翻訳家もいるようです。(2019年現在)法定翻訳家を検索することができるRaad voor Rechtsbijstand, Bureau WBTVのウェブサイトですが、オランダ語表示しかないので、Google chromeの翻訳機能などを使って英語に翻訳して検索しましょう。
最後に
今回はオランダの住民登録に必要な戸籍謄本(戸籍抄本)をオランダでも通用する書類にする方法と、その翻訳の方法について紹介しました。聞き慣れない単語や手続きが多いことに加え、ネットで検索してもなかなか情報が見つかりにくいトピックだと思いますので、今回の記事を参考に、必要な手続きを整理しながら、スムーズに書類を準備を進めてもらえればと思います。
この記事へのコメント
ブログの情報色々参考にさせて頂いているものです!
私はパートナービザで法廷翻訳家の方に戸籍の翻訳をお願いしようと見積もりを頼んでいます。
翻訳家の方の中で「原本送付が必要」な方と、「スキャンで対応オッケー」という方がいらっしゃいます。記事よりスキャンコピーで対応頂いたようですが、書類が返ってきた際には、スキャンコピーには翻訳家さんのスタンプ・サインがされていましたか?
提出先によって原本・コピー必要なのかが違うということを翻訳家さんが仰っているのですが、提出された市役所では戸籍の原本またはコピーに翻訳家さんのサイン・押印は必要でしたか?情報が錯乱していて、困っております〔涙)参考までにご教授頂けるとうれしいです!
当ブログの記事が少しでもお役に立てているようで、私としても嬉しい限りです。
まず法定翻訳家の方から受け取った戸籍抄本の翻訳文についてですが、こちらについては翻訳文に「本人直筆のサイン+ハンコ」がされた形で封書にて郵送されてきました。
(ちなみに支払いは請求書が別途送付されてきて、そこへ銀行振込しました。)
提出先の役所が「原本orコピーのどちらを必要とするか」ということですが、私の場合は原本を市役所に持参し、窓口で担当者の方がそれをスキャンして原本は持ってかえることができました。
翻訳文の説明を担当者から受けた時は「翻訳家のサイン+押印」が必要だと言われたので、どちらかが欠けていると正式な書類として受理されないかもしれません。
ただ同じタイミングでオランダへ移住した日本人(一人はアムステルダム、もう一人はロッテルダム)は特に問題もなくすんなりと手続きが完了したと言っていたので、役所のある都市や、またその役所内の担当者によって対応に若干の違いがあるのが現状のようです。(いかにもオランダらしいですが。。。笑)
というわけで、「翻訳家のサイン+押印」がされた原本を役所に持っていくのが一番安全策ではないかと思います。
無事にお手続きが完了いたしますことを願っております。
はじめまして。オランダビザ申請のために情報収集していてこちらの記事に辿り着きました。
法定翻訳家について伺いたいのですが、Toshiさんはどのようにして翻訳家さんを選びましたか?
私は戸籍の翻訳が必要で翻訳家さんをこちらの記事と同じウェブサイトにて探しているのですが、みなさん個人でされているのかGmailのみでのやり取りで少し不安です。一人コンタクトを取った日本人の方はオランダ外務省の登録番号が記載していたので大丈夫だとは思うのですが、完全に信頼しきってもいいのでしょうか…。何かアドバイスいただけたら嬉しいです。
こんにちは。コメントありがとうございます。
Raad voor Rechtsbijstand, Bureau WBTVは公式のホームページなので、基本的にそこに記載されている翻訳家の方は(仰るとおりWbtv numberも載っているので)信頼できるはずですが、それ以外で信頼性を確かめる方法となると、あとは翻訳された書類にきちんと「翻訳家本人のサイン」と「正式なハンコでの押印」があるかどうがで判断するくらいしかないかと思われます。。
早速のご返信ありがとうございます。
公式のウェブサイトなら信頼はできそうですね。
差し支えなければ、Toshiさんが依頼された翻訳家の方を教えていただけないでしょうか。もちろん交渉等は自己責任で行いますので…ご検討いただけたらと思います。
私の場合、翻訳を依頼したタイミングではもうすでにオランダに移住していたのでオランダ在住のIF Truthさんという方にお願いしました!(ちなみに、彼の場合は連絡もメールの返信から書類の返送までスムーズにとれました。)
書類を郵送したりする物理的な手続きが伴いますので、つぐみ様がお住まいの場所に合わせて「日本在住の翻訳家の方」か「オランダ在住の翻訳家の方」に依頼するかを選ばれたらよろしいのではないかと思います。
無事に翻訳のお手続きが完了しますことを願っております。
色々と詳細に教えていただきありがとうございます!Toshiさんが依頼された方とは別の方ですが、先日翻訳家の方に依頼をしました。書類にはスタンプと登録番号も書いてあったので、信頼できるような気がします。あとは現地で申請が通ることを祈るのみです…改めて、ありがとうございます。